「もう春だ」とよく耳にしますが、春の始まりを示す「暦」にはどのようなものがあるのでしょうか?
例えば、「初春を祝う」と年明けに言われたり、4月の黄砂を「春のかすみ」と呼ぶなど、春の期間の捉え方は一定ではありません。
興味深いことに、小学生に季節について尋ねると、1月は「春」と答える子が多いですが、寒い日が続くと「冬」と答えることが多くなります。2月の節分を過ぎると再び「春」と答える子もいます。これはテレビの影響もあるかもしれません。
この記事では、春の始まりを以下の基準で考えてみましょう。
1)様々な暦(旧暦や気象庁の基準など)
2)春特有の気温や天候の変化
3)自然の変化、例えば「桜の開花」や「うぐいすの初鳴き」など
春の始まりを探る
●旧暦に基づく春
– 月別:1月から3月
– 節別:立春から立夏の前日まで
●気象庁が定義する春
– 期間:3月から5月
●天文学的に見た春
– 期間:春分から夏至まで
●会計年度での春
– 期間:4月から6月
旧暦による春の定義:月と節による季節の見方
旧暦は太陰太陽暦を基にしています。この暦での日付は太陰暦に、季節は太陽暦に基づいて決められています。そのため、春の定義は日付と季節の観点から異なることになります。
●旧暦の春の定義
1)月別:正月から3月まで
2)節別:立春から立夏の前日まで(これを「暦の上の春」と呼びます)
太陰暦における「月別」春の定義
月別の区分は、月の周期に基づいています。これは太陰暦の特徴で、例えば満月が15日にあたるなど、月の周期は日常生活での時間の把握に重要な役割を果たしてきました。
この区分では、1か月の長さが29日から30日に設定され、太陽暦と比べて年ごとに日付が変動します。例えば、2023年の立春は旧暦で1月14日、2024年では12月25日にあたります。
月別の春は、正月から3月までとされ、古い暦では「1月」ではなく「正月」という表現が用いられていました。
太陰暦の春:正月から三月まで
2024年の場合、新暦で2月10日から5月7日までが春に相当します。
2023年の場合は新暦で1月22日から5月10日まででした。
2023年の旧暦には閏月が2回存在しており、これは太陰暦の1年(約354日)と実際の季節のずれを調整するため、約3年に1度設けられる特別な月です。
その結果、旧暦における2023年の春は4カ月間となり、新暦の5月19日頃に春が終わると初夏に入る時期と一致します。
太陽暦に基づく「節気切り」の春の定義
「節気切り」(節月)は、二十四節気に基づいた年間24の期間に分ける方法で、太陽暦の重要な部分を形成しています。
メディアで「暦の上では」と言及される春は、この二十四節気に基づいて定められています。太陽の位置に基づき季節を判定するため、立春の時期は毎年ほぼ変わりません。
例えば、立春から次の節気である啓蟄の前日までが、春の始まりと考えられています。この節気切りは、太陽の運行を基準にした季節の感覚に合致しており、俳句の季語にも影響を与えています。
太陽暦に基づく春(=暦の上での春)は、立春から立夏の前日までです。
2024年の例では、2月4日から5月5日までが春に当たります。「立春」とは、「春が始まること」を意味し、寒さが和らぐ時期を指します。実際に、日本では1月下旬が最も寒い時期とされています。
2月に入ると、日差しも強まり、徐々に春へと向かいます。
気象庁による春の季節区分
気象庁は気象学的な基準に基づき、季節を区分しています。
気象庁の春の定義
期間:3月、4月、5月
この定義は一般的な季節感覚と大体合致しています。ただし、5月になると夏日が増え、初夏のような感覚を覚えることもあり、春の期間が短く感じることもあります。
天文学的な春の定義
天文学では、春は春分から夏至までと定義されています。これは太陽の位置と高さに基づく区分です。
天文学による春
– 期間:春分の瞬間から夏至の瞬間まで
例えば2024年では、3月20日 12時06分から6月21日 5時51分までが春とされます。
年度における春の定義
会計年度では、四半期ごとに3か月ずつ季節を区分し、4月から始まるのが一般的です。
年度における春
– 期間:4月、5月、6月
例えば、学校の行事では、6月上旬までを「春の大運動会」の期間として扱うことがあります。
春の気温と天気の変化
ここでは、気象庁が定める春の期間、3月から5月における日本全国の気温や天候の変化を見ていきましょう。
春季の気温推移について
春の気温上昇パターン
1月下旬
この時期は、日本全国で最も寒い時期です。
2月
2月を通して気温は平均で約2℃上昇し、まだ防寒着が必要です。
例:東京では、2月の初めは最高気温が10℃、月末は12.0℃。
3月
3月には平均で4℃以上の気温上昇が見られます。
例:東京では、3月初めの最高気温は12.1℃、月末は16.5℃。昼間は軽いジャケットで十分。
15℃を超えると「春の陽気」とされ、コートなしで過ごせます。
4月
4月にはさらに平均で5℃ほど上昇。
例:東京では、4月初めの最高気温は16.7℃、月末は21.9℃。
ただし、上旬には「花冷え」があり、夜桜を見る際には暖かい服装が必要です。
快適な気温はいつ?
– 東京の例:
– 3月:不快指数57.7で「肌寒い」
– 4月:不快指数65.1で「快適」
– 5月:不快指数71.6で「暑くない」
不快指数が70を超えると不快感を感じることが多いですが、4月は快適とされています。
5月の気候と特徴
5月は初夏の気候になり、特にゴールデンウィーク頃は暖かくなります。5月5日は立夏とされており、この時期は徐々に温度が上昇します。たとえば東京では、5月初めの平均気温は約22.0℃、月末には約25.1℃になり、夏日になる日もあります。実際に2021年の5月には、東京で25℃以上の夏日が14日間記録されました。
春の気象変動
春の気候の最大の特徴はその変動性です。
春の訪れと春一番
春には、揚子江気団(長江気団)という温暖で乾燥した気団が形成され、その暖かい空気が日本に流れ込み、春の訪れを告げます。春一番は、立春から春分の間に日本海に低気圧が形成され、強い南風が初めて吹き、気温が上昇するときに発生します。東京や北陸ではほぼ毎年観測されますが、東海地方では3年に1回程度です。春は一般的に強風が多い季節です。
「春に三日の晴れなし」の由来
春の天気が頻繁に変わるのは、移動性高気圧の影響が大きいです。暖かい空気の流入の間に低気圧が形成されるため、日本は高気圧と低気圧が交互に影響します。この高低気圧の交替が約1週間の周期で進むため、天気は晴れ、曇り、雨、曇り、晴れというサイクルで変わります。この周期的な天気の変化が、「春に三日の晴れなし」という言葉の由来です。
春の特有の天候「菜種梅雨」
3月から4月上旬にかけて、東・西日本の太平洋沿岸地域では高気圧が北方に偏ることで前線が停滞し、梅雨のように雨や曇りが続くことがあります。この現象を「菜種梅雨」と呼び、菜の花(菜種)が咲くこの時期にちなんで名付けられました。1995年には東京で3月の快晴日が0日という記録もありましたが、通常はこの天候は数日間続く程度です。
春の息吹:自然の観察記録
日本各地では春の到来を告げる自然の変化が観察されています。これには特定の植物の開花や野鳥の初鳴きなどが含まれます。しかし、都市化の影響でこれらの自然現象の観察が難しくなり、特に動物の観測は2020年をもって終了しました。ただし、一部の植物については観察が続けられています。たとえば、東京では2000年にうぐいすが最後に鳴いた記録があります。
また、各地の代表的な植物の開花時期のデータも残されています。例えば、うめやさくらの平均開花日は1990年から2020年のデータに基づいています。このデータから春の訪れが各地でいつ頃かが分かります。例えば、札幌では4月末にたんぽぽが咲き、ゴールデンウィークには春が本格的に訪れることが示されています。
春の訪れと自然界のサイン:モンシロチョウ、ウグイス、ツバメの動き
春の訪れとともに、日本各地でモンシロチョウ、ウグイス、ツバメの動向が注目されます。モンシロチョウとツバメはその年初めて確認された日、ウグイスは最初に鳴き声を聞いた日を記録しています。
地域によって春の到来の時期に違いがあることが、これらの生物の観察日からわかります。例えば、北の札幌ではモンシロチョウやツバメの姿を見るのは遅く、ウグイスの鳴き声は聞かれません。一方、福岡では3月初旬にはこれらの生物の活動が確認されています。
横浜気象台によると、モンシロチョウの平年の初見日は4月6日、ウグイスの初鳴きは3月18日とされています。春の自然界では、地味な外見のウグイスが鳴き声で繁殖のためのアピールを始めます。
まとめ
春の概要について、気象庁は3月から5月までを春と定義しており、立春から立夏の前日までを「暦の上の春」と呼んでいます。東京では3月末頃から桜が咲き始め、気温が15℃を超える日も増えてきます。暖かい春が待ち遠しくなりますね。