水の風景を彩る蓮（ハス）と睡蓮（スイレン）：似ているけれど、どこが違うの？

夏の水辺に咲く蓮（ハス）と睡蓮（スイレン）は、一見似ているように見えますが、実は全く異なる植物です。公園などで見かけると、どちらの花か迷うことがありますよね。外見は似ていても、蓮（ハス）はハス科、睡蓮（スイレン）はスイレン科に属しており、それぞれ独自の特徴があります。ここでは、これらの植物を見分けるポイントと、各々の特性について解説します。

蓮（ハス）と睡蓮（スイレン）、共通点と違い、見分けるコツ

蓮（ハス）です。

睡蓮（スイレン）です。

どちらも水面に美しい花を咲かせるという共通点があります。また、両者の名前に「蓮」という文字が含まれているのも興味深い点です。

蓮（ハス）と睡蓮（スイレン）の共通する特徴

蓮（ハス）と睡蓮（スイレン）は、共に水辺に生息する水生植物です。これらは水底の土や泥に根を下ろし、水面に葉と花を広げます。開花期は初夏から夏にかけてで、花は午前中に開花し、午後には閉じることが多いです。一つの花の寿命は約3～4日間で、絶え間なく新しい花が咲き続けます。

蓮（ハス）と睡蓮（スイレン）を見分けるポイント

蓮（ハス）はハス科に属し、水面から葉を立てる挺水性の植物です。対照的に、睡蓮（スイレン）はスイレン科に属する浮葉植物で、葉が水面に浮かぶ性質を持っています。

花と葉に見られる特徴的な違い

蓮（ハス）と睡蓮（スイレン）では、花の咲き方に大きな違いがあります。睡蓮（スイレン）の花は水面上に咲くのに対し、蓮（ハス）の花は水面より高く咲きます。また、葉の特徴も異なっており、睡蓮（スイレン）の葉は水面に浮かび、蓮（ハス）の葉は水面から立ち上がる形をしています。

なお、参考画像にあるように、睡蓮（スイレン）の花が水面より高く咲くこともあります。これは特に熱帯地方の種類に見られる現象です。

花の形状における差異

蓮（ハス）の花は、幅広く丸みを帯びた花弁が特徴的で、お椀のような形をしています。花の中央部には大きな花托が目立ちます。一方、睡蓮（スイレン）の花弁は細長く、先が尖っていることが特徴です。

葉の形状における違い

蓮の葉です。

睡蓮の葉です。

蓮（ハス）と睡蓮（スイレン）はどちらも円形の葉を持っていますが、睡蓮（スイレン）の葉には目立つ切れ込みが特徴です。一方で、蓮（ハス）の葉にはこのような切れ込みがなく、一枚の円形をしています。

特筆すべきは、蓮（ハス）の葉の独特な性質です。水辺に生えているにも関わらず、蓮（ハス）の葉は常に光沢があり、清潔に保たれています。これは葉の強力な撥水性によるもので、水や汚れを容易に弾きます。蓮（ハス）の葉にできる朝露の美しい水滴は、まるで輝いて見えます。この撥水性は「ロータス効果」として知られ、蓮（ハス）の葉の表面構造を模倣したコーティング技術は、塗料、繊維、自動車のサイドミラーなど様々な用途に応用されています。

睡蓮（スイレン）は、水面に葉を広げると、その葉が水と密接に馴染む特性を持ちます。この性質により、水面に葉が広がると水がスムーズに広がっていきます。

蓮（ハス）と睡蓮（スイレン）を見分ける際は、花と葉の特徴を理解することが重要です。ハスは、花も葉も大きく、水面から高く伸びるのが特徴的です。中には2メートルほどに成長する蓮（ハス）もあります。対して睡蓮（スイレン）は、花も葉も水面に浮かぶ涼しげな姿が特徴です。葉の形状にも微妙な違いがあるため、近くで観察するとその違いが分かります。どちらの花も夏の水辺の景色を美しく彩っています。

さらに、蓮（ハス）と睡蓮（スイレン）の根にも違いがあります。蓮（ハス）の根、つまり蓮根（レンコン）は穴が空いていますが、睡蓮（スイレン）の根は中身が詰まっており、ワサビのような質感があります。

蓮（ハス）についての基礎知識と特徴

蓮（ハス）はもともとインドが原産で、古代に中国を経由して日本にもたらされたとされています。日本では、寺や神社、公園の池などで一般的に見ることができる景観植物として広く栽培されています。

蓮（ハス）の開花期間は6月下旬から8月下旬までです。蓮（ハス）の花は寿命が短く、咲いてから3〜4日で散ってしまいます。朝に開花して、午後には閉じるので、満開の蓮（ハス）を見たい場合は午前中に訪れるのがベストです。

蓮（ハス）の根、すなわち蓮根（レンコン）は特徴的な形をしており、味も良いとされています。「食用ハス」として大きな塊茎が成長する種類や、主に観賞用の「花ハス」があります。ハスの実も食用になり、トウモロコシのような食感があると言われています。

蓮（ハス）の名前は、花の中心部分が花後に蜂の巣に似て大きくなることから「ハチス」と呼ばれていたことが起源です。平安時代後期にはこの名称が短縮され、「ハス」として広く使われるようになりました。

蓮（ハス）の花言葉には、「清らかな心」「休養」「雄弁」「沈着」「離れゆく愛」などが含まれています。

睡蓮（スイレン）の特徴と概要

睡蓮（スイレン）は熱帯から温帯地域に広く分布し、流れの少ない、水位が安定した河川、沼、池などに生息する植物です。地下茎から伸びた長い茎により、水面に葉や花を展開します。

睡蓮（スイレン）は耐寒性と熱帯性の2つの主要な品種に分けられ、それぞれ異なる気候条件下で成長し、栽培方法も異なります。

睡蓮（スイレン）の花は、種類や品種により開花時期が異なるものの、一般的には5月から10月にかけて開花し、6月から9月が最も見頃とされています。睡蓮（スイレン）の花は毎日開閉し、約4日間持続します。花が午後に閉じるため、観賞は午前中が適しています。

睡蓮（スイレン）の名前の由来にはいくつかの説があります。一つは、白い花が午後に咲くことから名付けられたとされます。もう一つは、花が日中に開き夜に閉じる様子から「睡眠する蓮」として「睡蓮」と呼ばれるようになったという説です。

睡蓮（スイレン）の花言葉には、「清純な心」「信頼」といった意味が込められています。